1月7日は「人日(じんじつ)の節句」。「人日の節供(せっく)」と書いたり、「七草の節句」と言ったりすることもある、一年に5つある五節句のうちの1つです。

この日には、一年の健康や無病息災を祈って、春の七草が入った七草粥(七草がゆ)を食べる風習があります。すでに仕事も始まり、お正月ムードなどどこへやら…という人も多いと思いますが、1月7日までを「松の内」とする地域も多く、お正月から通常モードに切り替わる日だとも言えそうですね(門松などの正月飾りを外すのも、この日であることが多いです)。

七草粥(七草がゆ)01
▲七草粥(七草がゆ)

今回は、中国から伝わったという、人日の節句の由来や、人日の節句に欠かせない行事食・七草粥について紹介します。歴史を知りたい人も、食べ物が気になる人も、ぜひご覧ください!


人日の節句とは?【古代中国が由来】

人日の由来は、中国で6世紀ごろに成立した『荊楚歳時記(けいそさいじき)』という書物に見ることができます。

古代中国では、1月1日(元日)から6日までのそれぞれの日に、野獣や家畜を当てはめて占いを行う風習がありました。元日には鶏を、2日には狗(いぬ)を、3日には羊を、4日には猪(いのしし)を、5日には牛を、6日は馬をというように占っていき、それぞれの日に対象となる獣畜を大切に扱ったのです(大切に扱う=殺さないなど)。

元日2日3日4日5日6日

▲干支とはちょっと並びが違いますね

そして、新年7日目は人を占う日だったので、これを人を大切にする「人日(じんじつ)」という節句にあてました(人を大切にする=処刑を行わないなど)。また、この日には7種類の野菜を入れた温かい吸い物を食べて、1年間の無病息災を祈っていたそうです。

ぼく(なごやっくす)ぼく(なごやっくす)

「人の日」だから、そのまま「人日」になったわけですね。「人日」という言葉に馴染みがない人も多いはずですが、これならそのまま覚えてしまえば良いので、分かりやすいのではないでしょうか!

日本の風習と融合して「七草粥」に!

さて、日本に目を移すと、もともと日本には、7種類の食材で作ったおかゆを食べて健康を願う風習や、お正月に若菜を積む「若菜摘み」という風習がありました。

1月7日に七草粥を食べるという風習は、これらの日本の風習と、奈良時代に中国から伝わった「人日」の風習とが混じり合って、人々のあいだに根付いたものだと考えられています。
日本と中国のどちらにも、もとから「7種類(の食べ物)」という共通のキーワードが登場しているのが面白いですね。

七草粥(七草がゆ)とは?

七草粥とは、1月7日(人日の節句)の行事食として親しまれている、春の七草が入ったおかゆ料理のこと。

春の七草01
▲春の七草。左上からゴギョウ、セリ、スズナ(カブ)。中央がナズナで、左下からホトケノザ、スズシロ(ダイコン)、ハコベラです

春の七草はセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)の7種類で、この7種類をすべて合わせると、およそ12種類の薬膳効果があると言われています。
昔の和歌「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ 春の七草」も有名です。語呂が良いので、声に出して読むとスゴく心地が良いですよ。

春の七草の和歌(短歌)

  • せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ 春の七草

ぼく(なごやっくす)ぼく(なごやっくす)

「春の七草」の部分を「これぞ七種(ななくさ)」と詠むパターンもあります。僕の場合、むかし通っていた塾の先生が、この歌を(なぜか)ラップ調でノリノリで繰り返してくれたおかげで、すぐに覚えられました

七草粥(おかゆ)は、お正月に食べ過ぎや飲み過ぎなどで疲れた胃腸を休めてくれますし、風邪などを引きやすいこの寒い季節にうってつけの料理だと言えます。だからこそ、長い年月を経て、現在まで風習が受け継がれているんでしょうね。
ちなみに、昔は冬に青物が手に入りづらかったこともあり、七草粥はビタミンCやミネラルを補う、まさに健康食だったようです。

春の七草
  • セリ(芹)
    セリ科の多年草。鎮痛作用があり、神経痛やリウマチなどに効くとされる
  • ナズナ(薺)
    アブラナ科の越年草で、ペンペングサとして知られる。天日干ししたものを煎じて、目の薬などに用いたことも
  • ゴギョウ(御形)
    キク科の越年草で、ハハコグサとも呼ばれる。 昔の草餅には、ゴギョウをき込んで作られていたものもあった
  • ハコベラ(繁縷)
    ナデシコ科の越年草。天日干ししたものを煎じて、皮膚炎の治療薬に用いることも
  • ホトケノザ(仏の座)
    キク科の越年草で、小鬼田平子(コオニタビラコ)を指す。シソ科にも同名のホトケノザあり
  • スズナ(菘)
    アブラナ科の1~2年草で、現代の野菜でいう蕪(カブ)のこと
  • スズシロ(蘿蔔)
    アブラナ科の1~2年草で、現代の野菜でいう大根(ダイコン)のこと

まとめ

ここまでご覧いただきありがとうございます。このページの要点をまとめました。

  • 1月7日は「人日(じんじつ)の節句」
  • 日本にあった「若菜摘み」などの風習と、中国から伝わった「人日」が混ざり合って、この日に七草粥を食べるようになった
  • 春の七草は「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ」の7種類

コンビニやスーパーでは、春の七草がセットになったパック詰めの商品が売られていますし、和菓子屋さんによっては「七草餅(ななくさもち)」などの歳時菓さいじかを販売しているお店もあります。
せっかくなら、「人日の節句」ならではの食事を用意して、日本の古き良き風習に倣いたいものですね。

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参考書籍・参考URL

▲お花屋さんが販売する、観賞用の「春の七草の寄せ植え」と、お粥に混ぜて食べられる「春の七草 フリーズドライ」のセット商品。ユニークで面白いです