初恋の日(10月30日)01

10月30日は「初恋の日」です。
島崎藤村ゆかりの宿である、長野県小諸こもろ市の老舗旅館中棚荘なかだなそうによって制定されました。

日付の由来は、明治29年(1896年)のこの日に、島崎藤村が『文学界』46号に「こひぐさ」の一編として『初恋』の詩を発表したことから。『初恋』の詩は、翌年に刊行された詩集『若菜集』に収められていることでも有名です。

毎年この時期には、中棚荘で「初恋はがき大賞」の企画が開催されるほか、10月から5月頃にかけては、地元のりんごを湯船に浮かべた「初恋りんご風呂」を楽しむことができますよ。

このページでは、島崎藤村と中棚荘の関係や、藤村の詩『初恋』(全文掲載)について紹介します!


島崎藤村と中棚荘の関係は?【『初恋』全文】

島崎藤村01
▲島崎藤村(1872-1943)

明治の文豪・島崎藤村は明治32年(1899年)に、私立「小諸義塾」に英語と国語の教師として赴任し、7年ほどを小諸の地で過ごしました。

藤村がこの期間(明治34年)に出版した詩文集『落梅集』には『千曲川旅情の歌』という詩が収められており、詩の中に登場する「岸近き宿」が中棚荘のことを指していると言われています(「千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む」)。藤村は足繁く中棚荘(当時は中棚鉱泉)に通っていたようです。

島崎藤村『初恋』全文(4連16行)

まだあげめし前髪の
林檎りんごのもとに見えしとき
前にさしたる花櫛はなぐし
花ある君と思ひけり

(まだ髪を上げたばかりの君が
りんごの木の下に見えたとき
前髪にさした花櫛の可愛らしさも相まって
花のように美しいと思った)

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅うすくれなゐの秋の実に
人こひ初めしはじめなり

(君は優しく白い手を差しのべて
りんごを僕に手渡してくれた
そのうっすらと赤いりんごの実とともに
僕の初恋が始まった)

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋のさかづき
君がなさけに酌みしかな

(僕から思わず漏れたため息が
君の髪にかかったとき
僕のうっとりするような恋心を
君が受け取ってくれたんだ)

林檎畑のの下に
おのづからなる細道は
が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

(「りんご畑の木の下に
自然とできたこの細い道は
いったい誰が歩いた跡なんだろうね?」と
あえて聞いてくる君がとても恋しい)

※カッコ内には独自の解釈が含まれます

ぼく(なごやっくす)ぼく(なごやっくす)

『初恋』が収められた『若菜集』は、当時の軟派な男性がデートで女の子を口説くときの小道具にしていたんだとか。今でいうラブソング、あるいは恋愛映画・恋愛リアリティショーのような役割を担っていたのかもしれません

『初恋』の構成と詩の形式は?【舟木一夫さんの曲】

リンゴの木01

『初恋』は、大まかに「二人の出会い」「恋の芽生え」「恋の成就」「その後」といった、起承転結の構成で描かれています。

詩の形式は「文語定型詩」です。現代では馴染みのない言葉遣いが登場しますが、七五調のリズムになっており読んでいて心地よいのが特徴。同じ七五調の『鉄道唱歌』に合わせて歌うこともできますね。なお、『初恋』はのちに舟木一夫さんの曲にもなっています(作曲は若松甲さん)。

ぼく(なごやっくす)ぼく(なごやっくす)

最後までご覧いただきありがとうございます。『初恋』は、リンゴの存在が「初恋」の気持ちの甘酸っぱさや、若々しさを連想させてくれますよね。余談ですが、先日カフェで友達と「初恋はなぜ忘れられないのか」について語りました。そして「覚えている限りで一番古い恋が『初恋』だから(=本当の初恋は記憶から消えている可能性がある)」という結論に至りました(笑) あなたの初恋の時期はいつですか?

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