10月30日は「初恋の日」です。
島崎藤村ゆかりの宿である、長野県小諸市の老舗旅館「中棚荘」によって制定されました。
日付の由来は、明治29年(1896年)のこの日に、島崎藤村が『文学界』46号に「こひぐさ」の一編として『初恋』の詩を発表したことから。『初恋』の詩は、翌年に刊行された詩集『若菜集』に収められていることでも有名です。
毎年この時期には、中棚荘で「初恋はがき大賞」の企画が開催されるほか、10月から5月頃にかけては、地元のりんごを湯船に浮かべた「初恋りんご風呂」を楽しむことができますよ。
本日10月30日は「#初恋の日」🍋
1896年のこの日、文豪 #島崎藤村 が「こひぐさ」の一編として、"まだあげ初めし前髪の…"からはじまる「#初恋の詩」を発表したことから、藤村ゆかりの宿・中棚荘(小諸市)が制定。
中棚荘では10月~5月頃まで湯船にりんごを浮かべる「初恋りんご風呂」を楽しめます🍎 pic.twitter.com/baZqOT4Qdv— しあわせ信州【公式】 (@nagano_b) October 29, 2022
このページでは、島崎藤村と中棚荘の関係や、藤村の詩『初恋』(全文掲載)について紹介します!
島崎藤村と中棚荘の関係は?【『初恋』全文】
明治の文豪・島崎藤村は明治32年(1899年)に、私立「小諸義塾」に英語と国語の教師として赴任し、7年ほどを小諸の地で過ごしました。
藤村がこの期間(明治34年)に出版した詩文集『落梅集』には『千曲川旅情の歌』という詩が収められており、詩の中に登場する「岸近き宿」が中棚荘のことを指していると言われています(「千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む」)。藤村は足繁く中棚荘(当時は中棚鉱泉)に通っていたようです。
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
(まだ髪を上げたばかりの君が
りんごの木の下に見えたとき
前髪にさした花櫛の可愛らしさも相まって
花のように美しいと思った)
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
(君は優しく白い手を差しのべて
りんごを僕に手渡してくれた
そのうっすらと赤いりんごの実とともに
僕の初恋が始まった)
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
(僕から思わず漏れたため息が
君の髪にかかったとき
僕のうっとりするような恋心を
君が受け取ってくれたんだ)
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
(「りんご畑の木の下に
自然とできたこの細い道は
いったい誰が歩いた跡なんだろうね?」と
あえて聞いてくる君がとても恋しい)
※カッコ内には独自の解釈が含まれます
『初恋』が収められた『若菜集』は、当時の軟派な男性がデートで女の子を口説くときの小道具にしていたんだとか。今でいうラブソング、あるいは恋愛映画・恋愛リアリティショーのような役割を担っていたのかもしれません
『初恋』の構成と詩の形式は?【舟木一夫さんの曲】
『初恋』は、大まかに「二人の出会い」「恋の芽生え」「恋の成就」「その後」といった、起承転結の構成で描かれています。
詩の形式は「文語定型詩」です。現代では馴染みのない言葉遣いが登場しますが、七五調のリズムになっており読んでいて心地よいのが特徴。同じ七五調の『鉄道唱歌』に合わせて歌うこともできますね。なお、『初恋』はのちに舟木一夫さんの曲にもなっています(作曲は若松甲さん)。
最後までご覧いただきありがとうございます。『初恋』は、リンゴの存在が「初恋」の気持ちの甘酸っぱさや、若々しさを連想させてくれますよね。余談ですが、先日カフェで友達と「初恋はなぜ忘れられないのか」について語りました。そして「覚えている限りで一番古い恋が『初恋』だから(=本当の初恋は記憶から消えている可能性がある)」という結論に至りました(笑) あなたの初恋の時期はいつですか?
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※ページ内で紹介している情報は変更になる場合があります。最新情報は公式サイトなどでご確認ください
参考URL
- 島崎藤村ゆかりの宿 – 中棚荘
- 一般社団法人 日本記念日協会(協会認定記念日) – 公式サイト
- 私立「小諸義塾」について – 小諸市
- 島崎藤村『若菜集』 – 青空文庫
- 高橋昌子「島崎藤村文学に思いを馳せる~恋は罪、それでも美しい~」 – 三重大学
- 初恋(島崎藤村)|10min.ボックス 現代文 – NHK for School
- 陳知清「島崎藤村『初恋』の教材的価値」 – 東京学芸大学リポジトリ
- 中棚荘と水明楼 – 一般社団法人 こもろ観光局
- CD『初恋~舟木一夫抒情歌謡をうたう~』(日本コロムビア,2003)