12月17日は飛行機の日です。1903年12月17日午前10時35分、アメリカ・ノースカロライナ州にあるキティホーク近郊のキルデビルヒルズにおいて、ライト兄弟が「ライトフライヤー号」で有人動力飛行に初めて成功しました。
今回はライト兄弟の初飛行を楽しく学ぶことを目的に、以下の3本立てでお届けします。
- 初飛行で操縦したのはどっち?
- 飛んだ時の距離と時間は?
- 歴史的瞬間に立ち会った観客は何人?
さっそく一緒に見ていきましょう!
初飛行で操縦したのはどっち?
初飛行で飛行機を操縦していたのは、弟のオーヴィルでした。人類の歴史を変える初飛行、どちらが操縦するかで兄弟喧嘩が起きたりしなかったのでしょうか。
実は3日前の12月14日にも、ライト兄弟は有人動力飛行に挑戦しており、このときコインを弾く賭けで、どちらがライトフライヤー号に乗るかを決めていました。
その際は兄ウィルバーが賭けに勝ち、飛行機に乗り込んだものの、操縦の判断ミスで成功ならず。3日後の初飛行の日は、その流れで弟オーヴィルが操縦する順番だったようです。
写真の右端は兄ウィルバー。弟オーヴィルはうつ伏せになって飛行機に乗り込んでいます。ライトフライヤー号は写真奥に向かって離陸しました。
左端から中央に伸びているのは、滑走用のレールです。兄ウィルバーは、飛行機が滑走中にバランスを崩さないよう、左手で翼を支え続けていました。この写真は翼からを手を離したタイミングで撮影されたのだと思われます。
ライトフライヤー1号のデータ | |
---|---|
乗員 | 1名 |
幅 | 約12.2m |
全長 | 6.43m |
最大速度 | 時速約48km |
重さ | 約340kg |
飛んだ時の距離と時間は?
ライト兄弟が有人動力飛行に初めて成功したときの飛行距離は約37mで、滞空時間は12秒でした。数字だけ見ると短く感じられるかもしれませんが、
- 人間が乗り(有人)
- エンジンを使い(動力)
- 空気よりも重い機体を飛ばした
この3つに大きな価値がありました。途中で失速せずに、離陸時と同じ高さの地点に着陸したのもポイントです。
このあとライト兄弟は交互に操縦し、合計4回の飛行を行ないました。正午に行なわれた4回目では、兄ウィルバーが飛行距離260m、飛行時間59秒という記録を作っています。
回 | 操縦者 | 飛行距離 | 飛行時間 |
---|---|---|---|
1 | 弟オーヴィル | 120フィート (36.6m) | 12秒 |
2 | 兄ウィルバー | 175フィート (53.3m) | |
3 | 弟オーヴィル | 200フィート (61m) | |
4 | 兄ウィルバー | 852フィート (260m) | 59秒 |
なお、5回目を飛ぶ話もありましたが、突然の突風でライトフライヤー号が損傷したため、中止に。その後、飛行機はライト兄弟が拠点にしていたオハイオ州・デイトンへ戻され、二度と空を飛ぶことはありませんでした。
▲自転車店で働く兄ウィルバー(1897年頃)
ちなみに、ライト兄弟はオハイオ州デイトンで「ライト自転車商会」を営んでいました。ライトフライヤー号の製造などにかかるお金は、自転車店の利益でまかなわれていたのです。
歴史的瞬間に立ち会った観客は何人?
ライト兄弟が有人動力飛行に初成功したときの観客はわずか5人でした。というのも、初飛行の地・キティホークには、当時50世帯ほどの住民しか住んでおらず、また飛行が行なわれたキルデビルヒルズは、キティホークからさらに6.4km離れた砂丘だったのです。
また、3日前の失敗も期待値を下げていたようです。弟オーヴィルものちに「みんな飛行機の失敗を見るため、わざわざ寒い12月に外に出たくなかったのだろう」と説明をしています。
初飛行に立ち会った観客 |
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ジョン・T・ダニエルズ |
アダム・エサリッジ |
ウィル・ドウ |
W・C・ブリンクレイ |
ジョニー・ムーア |
ダニエルズ、エサリッジ、ドウの3人は、当時キティホークに置かれていた合衆国救命局の救護基地のメンバー。ブリンクレイはマンテオの酪農家で、ムーアは18歳くらいの若者です。
ダニエルズは前掲の初飛行の写真を撮影した人物でもあります。カメラはライト兄弟が用意したもので、兄ウィルバーがあらかじめ三脚をセットし、「飛行機が通過するときシャッターを押してくれ」とダニエルズに頼んでいたようです。
【まとめ】飛行機は今どこにある?
最後までご覧いただきありがとうございます。おさらいとして、今回の内容をまとめておきますね。
- 12月17日は飛行機の日。1903年のこの日、ライト兄弟が初の有人動力飛行に成功した
- 初飛行の際、ライトフライヤー号を操縦していたのは弟のオーヴィル・ライトだった
- 飛行距離は約37mで、滞空時間は12秒。同日4回目の飛行で兄ウィルバー・ライトが260m、59秒の記録も残している
- 歴史的瞬間に立ち会った観客は、写真を撮影したジョン・T・ダニエルズなどわずか5人だった
ライト兄弟が初の有人動力飛行に成功した飛行機「ライトフライヤー1号」は現在、アメリカ・ワシントンD.C.のスミソニアン国立航空宇宙博物館に展示されています。一度、生で見てみたいものです。
This is the actual 1903 Wright Flyer, which Orville Wright successfully piloted on this day in 1903 to usher in the aerial age. It's in our collection and is on display at the Museum in DC.
Can't visit? Explore a 3D virtual model: https://t.co/nj3b5bVDCu pic.twitter.com/A6lPdoXfIJ
— National Air and Space Museum (@airandspace) December 17, 2021
▲国立航空宇宙博物館公式Twitter
ツイートの和訳 |
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オーヴィル・ライトが1903年のこの日、操縦に成功し、航空時代の到来を告げたライトフライヤー号の実物です。これは私たちのコレクションであり、ワシントンDCの博物館に展示されています。 訪れられませんか?それでは、3Dバーチャルモデルでご覧ください:s.si.edu/3lXyItC |
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このページの作成にあたり、書籍『ライト兄弟 イノベーション・マインドの力』を読みました。ライト兄弟の膨大な量の日記や報道記事、家族との手紙などの資料を駆使して描かれている、ニューヨークタイムズ・ベストセラー第1位に輝いた1冊です。日本語訳も硬すぎず、楽しく読むことができました!
参考文献
- デヴィッド・マカルー『ライト兄弟 イノベーション・マインドの力』秋山勝訳、草思社、2017年、ISBN978-4-7942-2278-7
- 土佐幸子『ライト兄弟はなぜ飛べたのか 紙飛行機で知る成功のひみつ』さ・え・ら書房、2005年、ISBN4-378-03896-X
- たかはしまもる『ライト兄弟 コミック版 世界の伝記23』ポプラ社、2012年、ISBN978-4-591-13104-6
- 早野美智代『ライト兄弟 おもしろくて やくにたつ 子どもの伝記4』ポプラ社、1998年、ISBN978-4-591-05722-3